対数正規分布(Log normal distribution)
勝ち組への道対数正規分布
金融工学
オプションの価格公式として有名なブラック=ショールズ式では対数正規分布が決定的に重要な役割を果たしています。
この理論では、株価の変動は幾何ブラウン運動によって支配されていると仮定しています。そしてこの仮定から、株価の収益率(= 前日の終値/当日の終値 -- 1)は対数正規分布に従っているということが分かるのです。
では簡単に、実際の例を見てみましょう。
下の図の左側は、TOPIX の収益率の分布です。 一方右の図は、対数収益率(= log(前日の終値/当日の終値) )です。
なるほど、確かに収益率の対数が正規分布に従っているみたいですね。 つまり、元の収益率は対数正規分布に従っているという仮定が一番もっともらしいことが分かるでしょう。
最近では、対数収益率は正規分布よりもっと裾の厚い分布に従っているという議論が高まってきています。そういった分布としてジョンソン SU 分布が現在非常に注目されているのです。
他にお金がらみの話としては、世帯の年収の分布が対数正規分布(に近い分布)になるとの分析もあったりします。興味のある方は ここに厚生労働省に よる所得の分布の図があるのでぜひ確かめてみてください。ご感想は心の中にでもしまっておいてください。
ちょっと注意
正規分布の累積分布関数は
と表記されることを正規分布の項で説明しましたね。 では、対数正規分布に従う確率変数 の分布関数はどうなるかというと、実に単純なもので、
になります。そう、正規分布の変数を としただけなんです。
ここでもうちょっと注意。 正規分布の確率密度関数が
であるからって、調子に乗って対数正規分布の確率密度関数を、
としないようにしましょう。確率密度関数は、累積分布関数を微分して求めるもの。だから正しい確率密度関数は、
となります。分母の を忘れないようにね。
分布の形状
基本情報
-
2つのパラメータ が必要です (どうやって求めるの?).
-
半無限区間 で定義された連続分布です。
-
平均対して常に非対称です。
確率
-
ここで は標準正規分布の累積分布関数です。
-
ここで は標準正規分布の確率密度関数です。
-
Excel での累積分布関数 (c.d.f.) と 確率密度関数 (p.d.f.)の求め方
A | B | |
---|---|---|
1 | データ | 説明 |
2 | 0.5 | 対象となる値 |
3 | 0.1 | 分布のパラメータ M の値 |
4 | 2 | 分布のパラメータ S の値 |
5 | 数式 | 説明(計算結果) |
6 | =NTLOGNORMDIST(A2,A3,A4,TRUE) | 上のデータに対する累積分布関数の値 |
7 | =NTLOGNORMDIST(A2,A3,A4,FALSE) | 上のデータに対する確率密度関数の値 |
- 関連 NtRand 関数 : NTLOGNORMDIST
分位点
A | B | |
---|---|---|
1 | データ | 説明 |
2 | 0.7 | この分布の確率 |
3 | 0.1 | 分布のパラメータ M の値 |
4 | 2 | 分布のパラメータ S の値 |
5 | 数式 | 説明(計算結果) |
6 | =NTLOGNORMINV(A2,A3,A4) | 上のデータに対する累積分布関数の逆関数の値 |
- 関連 NtRand 関数 : NTLOGNORMINV
分布の特徴
平均 -- 分布の"中心"はどこ? (定義)
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分布の平均 は次式で与えられます。
ここで
です。
-
Excel での計算法
A | B | |
---|---|---|
1 | データ | 説明 |
2 | 0.1 | 分布のパラメータ M の値 |
3 | 2 | 分布のパラメータ S の値 |
4 |